皮革製造メーカーのWEB担当 ヒロです。
いきなりですが、僕は馬革が好きです。
仕事柄よく触るのですが、牛革とは違った魅力があります。
馬革の種類と牛革との違いをまとめます。
馬革(ホースレザー)とは
名前の通りですが、馬革は「馬」から採れる皮を加工した物です。
馬革はキメが細く柔らかい手触りが魅力。
バッグや財布、洋服(レザージャケット)など様々な形で利用されています。
また、その柔らかさからソファのようなインテリアにも使われる素材です。
馬革(ホースレザー)の種類と特徴
馬革(ホースレザー)と一言でまとめられますが、「皮の部位」や「加工方法」により大きく3つに分類されます。
- ポニーレザー
- ホースハイド
- コードバン
それぞれ詳しく見てみましょう。
ポニーレザー
ポニー(Pony)とは、肩までの高さが147cm以下の馬の総称です。
「子供の馬」と勘違いされますが、成長しても小さいままの馬を呼びます。
馬革の中で最も軽いとされ、牛革と比較すると約半分程度の重さです。
手に吸い付くような手触りが魅力で、例えるなら「赤ちゃんのもち肌」のような質感です。
また、毛の質感が「ハラコ」(子牛の毛皮)と質感が似ており、代用品として利用されることもあります。
ホースハイド
部位で言うと馬の胴体の皮を使用。
ホースハイドの「ハイド(hide)」とは「大動物の皮」の意味になります。
つまりそのまま、「大人の馬の皮」となりますね。
原料皮は,その大きさによりハイドhideとスキンskinに区別する。
引用元:コトバンク
ハイドは大動物(ウシ,ウマなど)の皮で,アメリカ,カナダ規格では皮重量25ポンド(約11kg)以上のもの,スキンはそれ以下のもので,幼動物または小動物(子ウシ,ヒツジ,ブタなど)の皮をさす。
馬革の特徴は、「ハリ」と「柔らかさ」です。
運動量が多い馬は余分な脂肪が少ないので、ハリがあり軽くて柔らかい皮が採れます。
その柔らかさを活かして「ソファ」や「バッグ」など、動きが必要なレザーアイテムに多く用いられています。
さらに「大人の馬の皮」を細かく分類すると「ホースフロント」と「ホースヌメ」に分けられます。
ホースフロント
「ホースフロント」は馬の首の部位を指します。
比較的「若い馬の皮」を使用し、きめが細かく柔らかい手触りが特徴です。
ただ、ホースハイドに比べる強度は劣ります。
そのきめの細かさから「衣類」などに使用されることが多い素材です。
ホースヌメ
染色などの加工を施していない「馬の革」です。
いわゆる「ヌメ革」の事を言います。
馬の皮を植物性のなめし剤を使ってなめし、蜜蝋などのオイルを塗り込むシンプルな加工方法。
加工後に軽く揉み込むと皮の「※しぼ」にオイルが浸透しナチュラルな雰囲気に仕上がります。
ポイント
「しぼ」とは「シワ模様」の事です。
皮革に加工の工程でシワをつける事を「皺(しぼ)を付ける」や「シボ加工」と言います。
コードバン
「革の宝石」と例えられる高級素材コードバン。
他のホースレザーとは異なり、強靭で硬くて頑丈です。
独特な光沢に品格さえ感じる、まさに「革の王様」。
コードバンは農耕馬(作業馬)の腰からお尻辺りの皮を使用します。
このお尻の表皮の下に「コードバン層」と言われる層があります。
ポイント
「コードバン層」 = コラーゲンの繊維層の事。
コードバン層は全ての馬のお尻にあるわけではなく、農耕馬のような野生が起源となる馬からしか採れません。
天敵である肉食のオオカミなどに襲われた時、致命傷を防ぐ為に発達した部位とされています。
ポニーやサラブレットに存在しない訳ではないのですが、範囲が狭く加工には適しません。
農耕馬からも採れた僅かな「コードバン層」を加工して作る革「コードバン」。
加工方法は階層が連なった繊維層を削り、「コードバン層」を露出させる必要があります。
一般的な革の加工に比べ手間も時間もかかり、稀少性が高くなります。
注意ポイント
それぞれ革の部位や特徴を書きましたが「タンナー(革の卸業者)」により工程が異なる為、革の特徴は一律ではありません。
同じ「コードバン」でもタンナーが違うと別の素材に見えます。
馬革と牛革の違いとメリット・デメリット
馬革の種類と特徴についてまとめました。
では、馬革を選択する事の「メリット・デメリット」はなんでしょう。
箇条書きで簡単にまとめます。
メリット
- 他の革に比べ軽量
- 柔軟性がある
- キメが細かく張りがある
馬革のメリットはなんといっても「素材の軽さ」です。
馬は牛などに比べ運動量が多く、余分な脂肪分が少ない皮が採れます。
加工した馬革は筋肉の質感がわかるような「ハリ感」が特徴。
伸縮性は少なく余り伸びません。
ただ、柔軟性があり加工がしやすい革の一つとされています。
若い馬革の手触りはしっとりと滑らかで、クセになる触り心地です。
デメリット
- 牛革に比べると強度が劣る
- 傷が多い・入りやすい
- 牛革に比べると探しづらい(?)
馬革は牛革などと比べると薄く・強度が劣るとされています。
ただ、それは一般論の話であり「部位」や「なめし方」の違いによって違いがでます。
「コードバン」はヘタな牛革より強度が上です。
また、「傷が多い」と言う点は、革が生き物の副産物である事を考えれば、ある程度仕方ないことです。
どちらかと言えば、馬は牛に比べると運動量が多く傷が多い。
傷を綺麗に隠す仕上げもありますが、ホースレザーはスッピンに近い風合いを活かした仕上げが多いです。
ただ、これも最終的にタンナーの仕上げや加工により異なるので一括りにはできません。
主に輸入に頼っているホースレザーですが、馬の個体数が減り取扱いが減りつつあります。
無くなるって事はないのでしょうけど・・・
「サステナブルレザー」の誕生など業界も変化してます。
馬革・牛革の見分け方
例えば目の前に「革財布」があって、「馬革か牛革、わかりますか?」と質問されたとします。
さて、回答できるでしょうか??
前提として「タンナー」や「皮の部位」により仕上げや加工方法が異なります。
その為、「見た目だけ」で革を見分けるのは結構難しいです。
ただ、「触れていい」のなら案外わかったりします。
「ポニーレザー」の章でも書きましたが馬革は触れると「手に吸い付くようなしっとりとした質感」が特徴です。
馬を撫でたことありますか??
あの質感わかりますかね?
説明が難しいのですが、牛革の質感とは違うんですよね。
実際触った事がある人なら、触った質感で見分ける事も可能かと思います。
注意ポイント
コードバンは皮の銀面(表面)を削いで「コードバン層」を露出させた革になります。
その為、上記の質感は当てはまりません。
馬革・牛革どっちを選べばいいか
好みの問題なので、正直どっちがいいとかありません。
ただ、ポイントを挙げるとしたら・・・
- 馬革は牛革と比べると軽い
- 馬革のエイジングは素晴らしい!!
基本的には「馬革」は「牛革」よりもライトに仕上がります。
牛革に比べ「約半分の重さ」の馬革も珍しくはありません。
「革バッグ」や「ライダース」など、軽量なレザーは嬉しいのではないでしょうか。
また、コードバンを筆頭に馬革は素晴らしい経年変化を見せてくれます。
仕上げや加工方法により一概には言えませんが、基本的にスッピンに近い仕上げが多いので素材の味が楽しめる革が多いです。
逆に言うなら「傷1つイヤ!!」と、言う人に馬革はお勧めできません。
馬革のお手入れについて
基本的にお手入れに関して、難しく考える必要はありません。
他の革と同じです。
綺麗なクロスでホコリを拭き取り、「デリケートクリーム」を塗り込むだけでOK。
それも(数週間〜数ヶ月)に1回とかで全然大丈夫です。
ポイント
クリームの塗りすぎは、本来の色味が損なわれるだけでなくカビの原因にもなります。
少量を塗ってしっかり拭き取りましょう。
ライダースのような、革の範囲が大きいアイテムをしっかり磨きたいときは「馬油(マスタングペースト)」もお勧め。
「革のお手入れ」と言うのは主には「油分の補充」と「保湿」です。
クリームには多くの種類があり、難しく考えてしまいがちですが基本的にどれを使っても問題はなし。
(※ヌバック・スエード・ハラコなどは除く)
「馬革だから絶対これ!!」とかありません。
「革磨き・レザーケア」のジャンルはこだわると抜け出せないコアな世界なので・・・沼ですよ。
ただ、ここでも異彩を放つ素材が「コードバン」です。
「デリケートクリーム」でのお手入れでも問題ないとされますが、コードバンの特徴はあの輝きです。
輝きを維持するのには「コードバン専用クリーム」を使うべきとされています。
まさに宝石ですね・・
まとめ
馬革(ホースレザー)についてまとめてみました。
「馬革」と一括りにされますが、部位や加工方法によって別物である事が分かったと思います。
中でも「コードバン」は一般的な「ホースレザー」の特徴や加工方法とは異なります。
ざっくり区分すると、「コードバン」か「ホースレザー」と言う認識でもいいかもしれません。
参考になれば幸いです。