皮革製造メーカーのWEB担当 ヒロです。
財布に傷をつけてしまった時・・・気になりますか?
または最初から傷が入っていた場合、どうしますか?
財布の「傷」について考えてみます。
傷つきやすい革とそうでない革
「財布の表面に傷をつけてしまった・・・」
新品の財布だと尚更ショックですよね。
ワザとじゃないにしろ、財布には傷が増えていきます。
そんな革財布の傷、あなたは気にしますか。
それともエイジングとして割り切りますか??
"革"と一括りにされがちですが、『傷つきやすい革』と『傷がつきにくい革』があるんです。
鞣し(なめし)とは
本題に入る前に、そもそも「革」ってなんだかわかりますか??
まず、「皮」とは牛や馬から剥いだ肌の部分。
この皮はそのままにしておくと、すぐに腐敗が始まり硬くなり柔軟性がなくなります。
そんな「皮」を薬品を使い処理して「革」へとを製造する工程を「鞣し(なめし)」と言います。
「なめし」という漢字は「鞣し」と書き、「革」を「柔」らかくするという意味。
では、鞣しにはどのような種類があるのでしょう。
鞣しの違いと経年変化と傷の関係
「鞣し」はタンナー(革製造メーカーの事)により技法が異なります。
その中でも代表的な鞣しは2種類。
「タンニン鞣し」と「クロム鞣し」それぞれ特徴を簡単にまとめます。
タンニンなめし | クロムなめし | |
原料 | 樹皮などから抽出される植物の"渋" | 塩基性硫酸クロムという金属化学薬品 |
質感 | 硬くて丈夫 厚い | 柔らかい 薄い |
良いところ |
・経年変化(エイジング)が楽しめる ・天然素材(薬品等の不使用) ・革を育てる喜び |
・水に強い ・傷に強い ・汚れに強い ・色の変化が少ない ・メンテナンスの必要がほぼ無い |
悪いところ |
・傷がつきやすい ・水に弱い ・重い ・大量生産不可(工程が大変な為高い) |
・経年劣化に近いイメージ ・エイジングはほとんどしない ・アレルギー体質の人は注意が必要 |
タンニン鞣し
植物タンニン鞣しとも言われます。
化学薬品を使用せず、樹皮などから抽出される植物の"渋"(植物タンニン)で鞣した革です。
スッピンの革「ヌメ革」がこれに該当します。
タンニン鞣しの一番の特徴はエイジング。
使い込むほどに革が柔らかくなり飴色に変化、自分で育てる楽しみが味わえます。
クロム鞣し
鞣し工程の際、「塩基性硫酸クロム」と言う薬品で鞣した革です。
特徴としては耐熱性があり、傷が付きづらい。
また、タンニン鞣しと比べると、変色が少なく、革も薄く軽量で柔らかいので、加工がしやすくメンテナンスの必要もほぼ無し、エイジングもあまりしません。
何年経っても大きな変色がありませんよね。
この事から現在の流通量は「タンニンなめし2割:クロムなめし8割」とも言われています。
イメージが掴めたでしょうか。
では、本題の"傷"についてです。
財布の傷についての考え方
革は動物の皮を加工した物ですから個体差があります。
それこそ"傷"が入っていたり"ホクロ"があったりなんてザラです。
これらの傷は"染色"の工程で隠されます。
傷やホクロなどを隠さず仕上げる染色を「素上げ」と言います。
薬品などを使用せずに、革本来の表情を残し"スッピン"の状態で仕上げます。
素上げの場合、革の表面に残るキズやシワを隠しません。
逆に「顔料仕上げ」という染色。
こちらは革全体に顔料を吹きかけて、革の上から色をのせます。
この方法なら傷が完全に隠れます。
革に膜が張られるイメージといえば近いかな。
素上げ | 染料仕上げ | 顔料仕上げ | |
仕上げ | 薬剤をほとんど使わず磨いて仕上げる | 素材の質感を生かしながらアニリン染料で色付け | スプレーなどを使い顔料を色をのせる方法 |
エイジング | あり | あり | なし |
傷 | 傷は隠してない
傷はつきやすい |
傷は薄くなっているが隠している訳ではない
傷はつきやすい |
傷を隠している
傷はつきにくい |
特徴など | ヌメ革 革本来の商品が欲しいならこれ | 栃木レザーやブッテーロ など | ビビットな色使いも可能 革らしくなくなる? |
つまり素材によって財布の傷は味にもなるし、みすぼらしくもなるという事です。
財布の傷が気になった場合、まずは素材に注目してみましょう。
「革」と一言にいいますが、加工の違いでメンテナンスも異なります。
別の素材と考えても良いくらいです。
エイジングする革なら傷は味の一つになりますが、エイジングしない革は劣化に近いイメージでしょうね。
まとめ
染色作業は人間の"化粧"によく例えられます。
スッピンに近い「素上げ」 → 厚化粧の「顔料仕上げ」。
こんな感じ。
女性の化粧と同じですね 笑
財布を購入する時の参考になれば幸いです。
参考になれば幸いです^^